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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第6章 鷺草~真実の愛~

 王は感情の読み取れぬ顔でその場に立ち尽くしている。
 今日、大殿の廊下ですれ違ったときに見せたあの表情だ。池の面のように静まり返った瞳に一瞬だけ浮かぶ哀しみの翳り。
 ふいに百花は声を上げた。
 もちろん、夢の中で声を出しているだけで、現実に叫んでいるわけではない。
 だが、夢の中で彼女は確かに愕きの声を上げていた。

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