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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第6章 鷺草~真実の愛~

 更に十日近くを経た。
 夢を見た日から、なかなか眠れない夜が続いたせいで、その日はいつもよりは少し遅くなった。昌淑の介添えで朝食を取り、薬湯を呑むのもいつもと変わりない。
 すべてが終わり、洗濯に出かけようとしていたら、昌淑が緊張した面持ちで告げにきた。
「尚宮さま、提調尚宮さまがお越しです」
 人前では、お付き女官としての態度をけして崩さない昌淑である。
 謹厳な提調尚宮を前にすると、物怖じせぬ昌淑も普段どおりにはゆかないらしい。

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