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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第6章 鷺草~真実の愛~

「昨日、尚薬さまより殿下に上奏がございました。愼尚宮がめでたくご懐妊、既にお腹の御子は五ヵ月にまでお育ちになり、母子ともにご順調と承っております」
 あの老尚薬が喋るとは考えてもいなかった。偏屈で気難しいが、口の固い信用できる男だと信じ込んでいたのである。もっとも、尚薬も王室に仕える内官にすぎず、仮に王の寵愛を受けた女が懐妊していたなどという重大な事実を隠していたと知れたら、処罰は免れない。

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