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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第6章 鷺草~真実の愛~

 厳粛に執り行われる儀式を提調尚宮は満足げに見守り、他の大勢の女官たちは少し離れた場所から羨望のまなざしで眺めている。
 百花の美しさに、若い女官たちからはしきりにどよめきや溜め息が洩れていた。
 しかし、この晴れの日のいちばんの主役であるはずの当の百花は眼を伏せたまま、湧き出てくる涙を堪えるのが精一杯であった。
 自分は負けたのだ。他でもない、権力の前では、自分のようなちっぽけな存在など取るに足らない。王が命じれば、この生命はすぐにでも露と消えてしまう―それほど儚いものなのだ。

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