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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 導宗はけして傑出しているわけではない、生まれながらに聡明で、〝神童〟と謳われるほどの幼少時代が今も語りぐさとなっている彼の父のようなことはなかった。だが、身体が弱く病に伏しがちであった先代と異なり、明朗で闊達な現王は身分に拘らず意欲的に若い有能な人材を見出しては登用し、長らく停滞気味であった淀んだ宮中人事に清新な風を呼び込もうとしている。
 むろん、革新が急に進むと、必ず良い顔をしない者たちがいる。長期に渡り、官職の座に居座り続け、裏で甘い汁を吸ってきた大臣たちだ。

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