夢で逢えたなら~後宮秘談~
第1章 恋の訪れ
この王のただ一つの難点が〝女好き〟であった。〝英雄、色を好む〟と古(いにしえ)からいわれるが、導宗は十八歳の若さで、早くも数人の側室を持っている。
導宗は世子時代に婚約者を喪った。相手の姫は領議政孫任徳の長男、平(ピヨン)徳(ドク)の娘である。平徳自身も兵曹判書の要職にあり、導宗の母仁徳王后の兄に当たるゆえ、従姉弟同士の結婚になるはずであった。
しかし、婚約者が急逝したため、この結婚は実現しないままになった。導宗自身はその時、漸く八歳、亡くなった姫と同年であった。従姉弟同士とはいえ殆ど行き来らしいものもなく、幼い二人を親しませるために姫君が入宮すると定められていたのは当人が亡くなった年の翌春の予定だった―。
導宗は世子時代に婚約者を喪った。相手の姫は領議政孫任徳の長男、平(ピヨン)徳(ドク)の娘である。平徳自身も兵曹判書の要職にあり、導宗の母仁徳王后の兄に当たるゆえ、従姉弟同士の結婚になるはずであった。
しかし、婚約者が急逝したため、この結婚は実現しないままになった。導宗自身はその時、漸く八歳、亡くなった姫と同年であった。従姉弟同士とはいえ殆ど行き来らしいものもなく、幼い二人を親しませるために姫君が入宮すると定められていたのは当人が亡くなった年の翌春の予定だった―。