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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 ろくに話したこともない許婚を忘れられないといった理由ではないのは明らかではあったが、王はこの後、周囲がどれほど勧めても王妃を迎えようとはしなかった。
 幸いにも導宗は健康な青年であった。共に脆弱であった両親には似ず、頑健な祖父、即ち朝鮮王朝中興の祖と賢君ぶりを讃えられた道祖(ジルジヨ)の体質を受け継いだのかもしれない。
 その容貌も線の細い貴公子然とした父王よりも大柄で逞しく武芸をよくたしなんだという道祖の若かりし頃と酷似しているといわれていた。要するに、彼の祖父もまた初代国王太祖に似ていたのである。

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