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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 それでなくとも民の暮らしの窮状には王自身、心を痛めているというのに、妃たちは皆、己れが身を宝石や美しい衣装で飾り立てることに執心し、そのために金を湯水のごとく使うのも厭わない。
 全く嘆かわしい限りだ。民から献上された米を食べ、丸々と肥えているのは両班ばかりなのに、肝心の両班たちは民から搾り取ろうとするだけで、彼らの切迫した日常には少しも思いやろうとしない。
 このままでは朝鮮は滅びてしまう。導宗はせめて王たる自らが範を示せば臣下も自ずと従うだろうと、三度の食事も努めて質素を心がけ、身に纏う衣服も正装は別として、寛いだときは王らしい威厳を失わない程度に、地味なものにしている。

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