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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 百花は、その声音に含む微妙な響きに気付いた。
 揶揄する中に、かすかに棘がある―嘲りにも似たような。
 百花はムッとした。いけないと、もう一人の自分が懸命に止めているのは判ってはいたけれど、どうにも自分を抑えられそうになかった。
「良い加減にして下さいませんか?」
 両脚を踏ん張って立ち、両の拳にぐっと力を込めて相手を見上げる。
 若い王はびっくりするほど上背があった。女にしても小柄な百花からすれば、まるで巨人のように見える。

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