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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第1章 恋の訪れ

 傍から見れば、大人と子どもにしか見えないかもしれない。そんなことを考えるゆとりがあるのは我ながら不思議だ。
「確かに私のような下級女官は至高の位におわす殿下にとっては虫けらに等しいのかもしれません。でも、私だって同じ人間なんです! 一生懸命、何時間もかかってやっと洗ったばかりの洗濯物をこんな風に台なしにされて、それでちゃんと謝りもせずにからかってくるだなんて、酷(ひど)いんじゃありませんか!?」
 ハッと我に返ったときには、遅かった―というのか、すべてが終わっていた。
 百花は見る間に蒼褪めた。

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