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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第2章 揺れる、心

 むろん、朋輩の誰かがご丁寧にそのすべてを(多分、尾ひれもつけて殊更大袈裟に)早速、崔尚宮に訴えたに違いない。
「たとえ一女官といえども、そなたも後宮に仕える者なら、その自覚と誇りを持てといつもあれほど言い聞かせておるであろうに。畏れ多くも殿下にお仕えする女官が殿下の御前で巷の下々の女どものように声を荒げて下品な言葉遣いで喚き散らすとは。おお、これで私の尚宮として地道に積み重ねてきたすべてが無駄になってしまった。苦節三十一年の後宮生活が―」
 そこで崔尚宮は額を押さえ、ふらりと身体を傾がせた。

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