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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第2章 揺れる、心

 翌日になった。午前中、百花は〝慎言牌〟の全文をひたすら書き写す作業に没頭した。
 〝慎言牌〟というのは王宮に仕える内官や女官の心得を説いた掟で、言葉どおり〝口を慎み、身を慎む〟といった内容で貫かれている。これが記された小さな札に紐をつけ、内官や女官は首にかけて常に携帯する。この心得に背いたときは、その場で全文を幾度も復唱させられるのだ。
 午後からは崔尚宮に命じられたとおり、殿舎の拭き掃除を一人でやった。王城は広く、国王の住まう大殿を中心とし、幾つもの殿舎が建ち並んでいる。

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