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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第2章 揺れる、心

「誰?」
 おずおずと触れると、その手は存外に大きくて分厚い。これは、間違いなく男性のものだ。でも、どうして―。と、思う間もなく、百花は悲鳴を放っていた。
「い、いやっ。放して!」
 その声を合図とするかのように、温かな手はあっさりと放れた。その温もりがなくなって、感じられなくなって淋しいと、たった一瞬でも思ってしまったのは、百花にとっては自分でも許しがたいことだった。
 振り向くと、百花は〝あ〟と声を上げた。

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