夢で逢えたなら~後宮秘談~
第2章 揺れる、心
新米女官はこの気難しい尚宮長に睨まれただけで、泣き出してしまうほどの威厳に満ちており、〝誰にでもお優しい〟とその慈悲深さを知られる大王大妃の方がよほどこの老獪な尚宮長よりも物腰もやわらかだといわれている。
「ほら、その可愛い頬が熟した林檎のようになっている。そんなに心配せずとも良いのだから」
ひょいと手が伸び、王の人さし指がチョンチョンと軽く百花の頬をつつく。
「ガミガミ婆さんといえば、ここにももう一人、怖いお婆さまがいるのであったな。今日、予がこの宮に来たのも実は、そのもう一人のガミガミお婆さまにそなたの謹慎を解いて貰うよう頼むためだったのだが―」
「ほら、その可愛い頬が熟した林檎のようになっている。そんなに心配せずとも良いのだから」
ひょいと手が伸び、王の人さし指がチョンチョンと軽く百花の頬をつつく。
「ガミガミ婆さんといえば、ここにももう一人、怖いお婆さまがいるのであったな。今日、予がこの宮に来たのも実は、そのもう一人のガミガミお婆さまにそなたの謹慎を解いて貰うよう頼むためだったのだが―」