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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第2章 揺れる、心

 そこで、王の言葉がいきなり途切れた。パシッと乾いた音と共に、百花は叫んでいた。
「触らないで下さい」
 呆気に取られた王の顔はある意味で見ものだった。生まれたそのときより、父である国王以外は誰もが彼の下位に―彼を生んだ実母、今は亡くなりし仁徳王后さえもが彼には頭を下げたのだ。生まれ落ちてこの方、頬を打たれたことなど正直、一回もなかった。
「―申し訳ございません」
 昨日、我を忘れてつい無礼な態度を取ったときは、百花も狼狽えた。

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