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夢で逢えたなら~後宮秘談~

第2章 揺れる、心

 金切り声でまくし立てる沈貴人に対して、百花は控えめに応えた。
「崔(チェ)尚(サン)宮さま(グンマーマ)にございます」
 口にすれば主人に迷惑が掛かることは判ってはいても、応えないわけにはゆかない。
 通常、百花が大王大妃殿に脚を踏み入れることはない。今日は特別で、催される宴のための、特別に各宮から女官が駆り出され手伝いにきたのだ。
「崔尚宮―、道理で見かけぬ顔なわけだな。そう申せば、崔尚宮の部下が国王殿下に前代未聞の不敬を働いたとか。殿下おん自らの取りなしで事無きを得たが、本来であれば、鞭打ちだけでも済まぬ重き罪と聞いた」

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