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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第3章 弐の巻

 安子は公子には笑顔を見せたが、去り際、一瞬だけ気遣わしげに帝の方を窺い見た。
 それでも、衣擦れの音をさせて御帳台から出て、更に几帳の向こうへと去ってゆく。
 安子と入れ替わるように、几帳越しに控えめに言上する者がいた。その嗄れた声から、公子を案内したのと同じ年老いた女房であると知れる。
「主上、畏れながら、急ぎご対面の場をご用意致します」

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