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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

「何か言いたそうなようだが、訊きたいことでもあるのか」
「―あなたは卑怯な方ですね、主上」
 乾いた音が突如、部屋に満ちた静寂に響き渡り、帝の頬が鳴った。
 かすかに愕いた顔を見せた帝だったが、すぐさま無表情に戻った。
 片手で右頬を押さえ、ふっと冷たい笑いを刻む。

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