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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

「大丈夫、ご安心下さい。姫は何も寝言なんかおっしゃっていませんでしたよ。その、今の科白は私の願望というか夢のようなものでして」
「え―?」
 公子が小首を傾げると、公之は曖昧な笑みを浮かべた。
「いや、良いのです。つまらない独り言ゆえ、気になさらないで下さい。それよりも、私がお持ちした草紙はいかがでしたか?」
 唐突に話題を変えた公之の不自然さにも気付かず、公子は頷く。

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