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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

「はい、〝落窪物語〟―、とても面白うございましたわ」
「それは良かった。当代きっての博識家と評判の姫に女子どもの読む草紙物語なぞお持ちしても、つまらないと思われるのではと心配していたのですよ」
「いいえ、とても面白くて、刻の経つのも忘れてしまいます。正直に言いますと、実は昨夜もずっと眠らずに起きて読んでおりましたの。それで、つい、今頃になってうたた寝をしてしまったのです」

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