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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

「本音をいえば、姫のお好きな漢籍などをお持ちできれば良いのですが、何しろ、伯父の手前、あまりあからさまに書籍を持ち出すことはできませんからね」
 当代きっての学者と名高い文章博士紀伊公明は、何を隠そう、この公之の伯父になる。公子自身、この公明にずっと師事していたゆえ、最初に公之からその話を聞いたときは、偶然とはいえ師匠の甥に助けられたことに随分と愕いたものだ。

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