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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 月光を受け、水面が銀色に輝いている。
 優しい川のせせらぎが呼んでいるように聞こえる。
―おいで、おいで。ここに来れば、もう誰に心を乱されることもない。男に欲まみれの眼で見られることもないし、そんなことで辛い想いをすることもないのだよ。
 あれは誰の呼び声だろうか。
 公子がその呼び声に唆され、いざなわれるようにして川べりにいっそう近付いたその時―。

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