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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 生まれたばかりの太陽が眩しい光が投げかけている。ふと前方を見れば、京の町家が軒を連ねる向こう側、はるかな地平から日輪が空を朝焼けの色に染めながら昇ってゆくところだった。こんなにも生命力に溢れた、力強さを感じさせる太陽を公子は初めて眼にしたような気がする。
 公子は自分たちのゆく手を照らす新しい光に眩しげに眼を細めながら、そっと公之の胸に頬を押し当てた。

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