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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第2章 壱の巻

「済まぬ、何も悪気があって申したわけではないのだ。実のところ、私は公子といると、刻が経つのを思わず忘れてしまうほどに愉しいからな」
 それでもまだ思いきりむくれている娘に、道遠はそっと手のひらに忍ばせてきたものを見せた。
「さて、我が姫のご機嫌はいつまで斜めだろうか」
 父の大きな手のひらの上を見、公子は眼を瞠った。

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