無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第2章 壱の巻
桐壺更衣―高階祐子、女性関係には何かと悪しき噂の多い帝がただ一人、本気で熱愛したという女人だ。多くの女官に手を付けても、すぐに熱が冷めていた十九歳の帝がこの祐子だけは傍から離そうとしなかった。咲き匂う花のごとくの容(かんばせ)と評されたように、儚げな面立ちの美少女で、十四歳で内裏に上がってほどなく帝の寝所に召された。
元々は大宮、つまり帝の生母安子付きの女房であり、たまたま母君の許を訪れた帝が祐子を見初めたのである。祐子は桐壺に住まいを与えられ、〝桐壺御息所〟と呼ばれた。
元々は大宮、つまり帝の生母安子付きの女房であり、たまたま母君の許を訪れた帝が祐子を見初めたのである。祐子は桐壺に住まいを与えられ、〝桐壺御息所〟と呼ばれた。