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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第15章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 すれ違い

 もっとも、京屋の内儀お彩はいつも過分の手間賃を弾んでくれる。お彩のためにもいっそう心を入れて縫い上げようと思っているのだが。
 生憎と針を持ったは良いが、先ほどから針で指を突いてばかりだ。小紅は小さく首を振り、溜息をついた。こんな有様では駄目だ。折角のおめでたい晴れ着に血がついてしまう。見れば、小紅の人さし指にはうっすらと血が滲み出ていた。

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