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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第15章 第一部・第三話【戀月桜~こいつきざくら~】 すれ違い

 徳太郎は二十二で人生を激変させる決断を下し、見事に亡き恩人の恩に報いた。そして、更に遠い大坂で自らのこれからの運命と人生を切り開いたのだ。その顔も見たことのない弟は弱冠十六歳で兄の跡を継ぎ、京屋の大身代を担った。
 それに比べて、自分はどうだろう。奇しくも栄佐が角倉栄之進を棄てたのも十六のときだった。

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