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一度だけ抱いて～花は蝶に誘われてひらく～

第20章 第二部・第四話【悲願花～女になった男～】　定命　　

　その言葉に、一瞬は弾んだ心が萎んでしまった。
　栄佐が更に質問を重ねる。
「念のために訊ねるが、その男の口許には、かなり目立つほくろがなかったか？」
　〝ここだ、この辺り〟と、栄佐は自らの口許を押さえて見せた。
　小紅は幾度も頷いた。
「あった！　あったわ。確かに結構目立つといえば目立ったわね」
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