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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第22章 第二部・第五話 【冬柿】 予兆

 それでも、板東碧天といえば、本物の女も色褪せるほどの色香と美貌で知られる名女形として江戸中に名を知られている。大部屋ながら碧天の錦絵が草紙屋に並べば、忽ち女たちの行列ができて完売というほどの人気ぶりである。
 無名の役者にしては極めて珍しい現象ではあるが、江戸の女で芝居好きであれば彼の名を知らない者はない。

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