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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第23章 第二部・第五話 【冬柿】 冬柿

 それにしても、栄佐と出逢ったときには、彼と結婚するだなんて当然ながら想像もしなかった。人の縁とは不思議なものだ。いつか初恋の男でもある叔父難波屋武平が
―めぐり逢った縁(えにし)の糸の相手を大切にするんだよ。
 と、言葉をくれた。今から思えば、叔父は自分自身が小紅のその相手ではないと端(はな)から判りきっていた。だからこそ、想いを打ち明け相思相愛だと判った夜、小紅を抱かなかったのだ。

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