一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第23章 第二部・第五話 【冬柿】 冬柿
ならば、晴れて結ばれようとしている栄佐こそが小紅の縁の糸の相手だったということになるのだろう。
祝言を挙げた暁には、小紅は栄佐の妻になる。母は小紅がまだ十一歳のときに亡くなった。儚げな風情の美しい女(ひと)だったが、影が薄いように思えるのはやはり、早世したからだろうか。とにかく身体の弱い人で、季節の変わり目には必ず体調を崩して寝込んでいた。
それでも甲斐甲斐しく父の身の回りの世話をしたり、小紅を抱いて優しくあやしてくれたりと良き妻、母であったと思う。
祝言を挙げた暁には、小紅は栄佐の妻になる。母は小紅がまだ十一歳のときに亡くなった。儚げな風情の美しい女(ひと)だったが、影が薄いように思えるのはやはり、早世したからだろうか。とにかく身体の弱い人で、季節の変わり目には必ず体調を崩して寝込んでいた。
それでも甲斐甲斐しく父の身の回りの世話をしたり、小紅を抱いて優しくあやしてくれたりと良き妻、母であったと思う。