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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第25章 第二部・第六話【春咲く花】 再会

 栄佐の声だった。途端に首を拘束していた法外な力が遠のき、小紅はふうっと意識を手放しそうになった。気力で何とか正気を保ち身を褥に起こすと、栄佐が黒い影と組んずほぐれつをやっている最中だった。
 思ったとおり、相手は相当屈強な男のようである。栄佐は細身でしなやかな体軀の割には力もあるし、相当の剣の遣い手でもあるが、今は素手で闘っている。しかも暗闇に慣れた眼に映ったのは鈍く光る匕首の刃だ。

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