テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪

 首をひねって傍らの小さな屏風を凝視した。あの小さな仕切りの向こうに小紅がしどけない夜着姿で横たわっていると想像しただけで、身体の芯が熱く滾ってくる。
 あの柔らかな身体に触れてみたい。そんな衝動にどうにも抗いかねて栄佐が身を起こしたその時、またしじまを破って小紅の声が聞こえた。
「ありがとう」
「何が?」
 栄佐は自分の邪な想いを小紅自身から言い当てられたようで固まった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ