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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪

「そこで訊くが、お前さんたち、店の中にいるときに女の悲鳴を聞かなかったかえ」
 男がぼんのくぼに手をやった。
「聞かねえな」
 と、女が男の袖を引いた。
「清さん、そういえば、私は確かに悲鳴を聞いたような気がするよ」
 男がわずかに眼を見開き、女を見た。
「お嬢さん―」
 言いかけて、ちらと栄佐を見やる。その眼には警戒心が現れていた。

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