テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪

 女は四十代前半、細面の整った美貌は栄佐に愕くほどよく似ていた。栄佐はそのまま身を滑らせ、中に入って障子を閉めた。臈長けた女性の前に進み、両手をついて頭を下げる。
「お久しうござります。ご健勝の様子、何よりと存じまする」
 女が婉然と笑った。
「そのような挨拶をわざわざ悠長にしにこられたのではないでしょう」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ