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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪

 栄佐は平坦な声で問うた。
「何故、罪のない女の生命を無益に奪おうとなされるのです?」
 女―栄佐の母瑞容院は笹紅を塗った紅い口許を心もち歪めた。
「すべてはお家のため、引いては殿のためにございます」
「私のため? 私の愛する大切な女を私から奪うことが私のためになると仰せになるのですか?」

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