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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 たとえ主筋の娘とはいえ、父の仁助(にすけ)は躾けには厳しかった。奉公人たちと同じように朝は早くから起き出し、身の回りのことはすべて自分でするように育てられた。
 が、その前夜に限り、小紅は父の居間に呼ばれて遅くまで話し込んだ。話は小紅の母おもとが生きていた頃にまで及び、〝おやすみなさい〟と告げて自分の部屋に戻ったのは深夜になっていた。

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