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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 叔父のお陰で遊女にならずに済んだばかりか、こうして以前と変わらないお嬢さま暮らしができるのだから、昔を懐かしんでいる場合ではない。そんなことをしたら、罰が当たる。
 申し訳なさで一杯になりながら謝ると、叔父は父によく似た眼許を和ませた。
「良いんだよ。短い間に色んなことがありすぎたんだから、普通でいられないのは当たり前さ。まあ、当分は何もかも忘れて、ここでのんびりと暮らすが良い」

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