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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち

―小紅、私はもしこの生命を生き存えることがあれば、そのときはもう我慢はしない。たとえ倅から奪うことになっても、自分の意思を貫いてお前を自分のものにする。
 息を引き取る少し前、武平は確かにそう言った。
 もし、あの時、武平が言葉どおり、生き存えていたなら、小紅の運命も変わっていただろうか。武平の妻となり、この難波屋の栄枯盛衰を見守っていっただろうか。

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