テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 小紅は耳聡い質で、夜中に物音がすれば―特に父の寝間はさして遠くなかったから、すぐに目覚めたはずだ。倉の家宝はいつ運び出したのかも判ず、事前に少しずつ運び出して、どこかに隠していたとも考えられる。
 が、たくさんの財宝がなくなっていれば、定期的に見回る番頭が異変を見抜くはずだ。だから、出奔した夜にあらかた持ち出した可能性が高い。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ