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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星

 市兵衛は親戚中の反対を押し切ってまで、お彩を後妻に迎えたという。お彩は小紅の母親の年齢だが、もう四十近いとは信じられないくらい若くて綺麗だ。
 お互いに愛し愛され、結ばれる。そこまで市兵衛ほどの大人物に求められたお彩を羨ましいとは思うけれど、小紅は実のところ、そんな女の幸せは既に諦めていた。あの夜、小紅は準平に最後まで奪われたわけではなく、まだ処女(おとめ)のままだ。しかし、あの出来事はいまだに小紅の心身に深い傷跡を残し、著しい男性不信を招いている。

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