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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 が、格好良くなったのは外側だけらしく、中身はてんで変わっていないのはすぐに判った。彼はおきさに似た細い眼を酷薄そうになお細め、値踏みするように小紅を眺め回した。
―嫌な眼。
 小紅はまたしても準平が嫌いになった。準平にとっては血の繋がる伯父がいなくなったのだ。まずは最初に労りの言葉をかけるなり、それらしい言葉を口にするのが礼儀ではないのか。

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