テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 息子の言葉に嘘はなかった。小紅は小さくなって、ただただ頭を下げるしかなかった。
 結局、お線香を上げることもできず、門前払いを喰らわされた。
 大番頭が最期の枷だったのだろう、以後の父の行いはますます荒れていった。最初は母のいなくなった淋しさを紛らわせるつもりだったのが、もう酒なしでは過ごせない身体になってしまったのだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ