一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨
大番頭の死後半年くらい経った頃、小紅は父について良くない噂を聞いた。もっとも、父に関してはもうろくな噂がないことは知っていた。それでも、その話を初めて耳にしたときは信じられない想いだった。
あろうことか、父が岡場所の女と懇ろになっているというのだ。まだ二十歳そこそこの若い女に夢中になり、言われるままに大金を貢いでいるという話だった。
流石にこれには知らん顔はできず、十三歳の子どもながら父に抗議したけれど、かえって腹を立てた父に殴られた。
あろうことか、父が岡場所の女と懇ろになっているというのだ。まだ二十歳そこそこの若い女に夢中になり、言われるままに大金を貢いでいるという話だった。
流石にこれには知らん顔はできず、十三歳の子どもながら父に抗議したけれど、かえって腹を立てた父に殴られた。