テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

「それにしても、旦那さまもお気の毒ですよ。あんな傑出したお方がどうして、若旦那さまのような出来の悪い倅に困らされてばかりなんでしょうね」
 使用人が主筋の倅に使う言葉としては考えものではあるけれど、あれほどの暗愚な倅であれば致し方ないのかもしれなかった。
 それよりも小紅は別のことが気掛かりだった。
「お琴さんはあの後、準平さんから特に意趣返しなんかされなかった?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ