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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 お琴は働き者で実直、情にも厚そうであるが、ただ一つ、お喋りと詮索が好きなのが玉に瑕のようだ。彼女は小紅が朝飯を取っている間中、ずっと給仕しながら難波屋の内情を教えてくれた。
 その中で準平の素行の悪さは想像以上のものだと判った。昨年、下働きの若い娘に手を付けて身籠もらせたこと。その娘は十七で秋には筒井筒の幼なじみと所帯を持つことが決まっていた矢先の出来事だった。

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