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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

「ええ、良い歳をして恥ずかしいったらないんですが、私しゃア、芝居見物が三度のおまんまより好きでしてねぇ。もちろん、私のようなその日暮らしの者には過ぎた贅沢だとは心得てますけど、せめて贔屓役者の姿絵くらいは拝んでも良いかなって、こうして肌身離さず持ってるんですよ」
 小紅は手許の浮世絵をまじまじと見つめる。

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