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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

「これは―女形(おやま)なのかしら?」
「ええ、ご存じありませんか? 板東碧天(ばんどうへきてん)といって、一部では神か仏のように熱心な崇拝者(ファン)がいる若手女形なんです。実際にはまだしがない大部屋役者にすぎませんけどね。個人的にあまりに熱狂的な贔屓筋がいるもので、こんな風にいっぱしの立て役みたいに錦絵が出回ってるんですよ」
「そうなの」

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