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幻想世界☆

第23章 闇からの誘惑

受付「503号室になります」

藤「有り難うございます」



エレベーターに乗り5階へ上がって、それから。



ニ「ここだね」

藤「覚悟はできてる?」

ニ「大丈夫だよ」

藤「なら行こうか」



トントン!



藤「失礼します、ガチャ」

ニ「‥‥っ」



最初に眼の中へ飛び込んで来たのは、窓際のピンクのカーテン。

そこにあるベットに座り、窓を眺めている中年の男の人が1人。



ニ「あのー」

男「‥‥‥」



が、声を掛けてもこっちを見ようともしない。



ニ「聞こえてないのかな」

藤「傍へ行ってみよう」

二「うん」



俺とガヤは思いきって近くまで寄ってみることにしたんだ。

すると―



ニ「ガヤ!」

藤「間違いない、この顔は執事だ」



しかし俺達に対し全く反応がなく。

と、その時ガチャっと扉が開き。



看護「山上さん検温の時間ですよ、あら御見舞い?」

ニ「あ、はい」

看護「ボランティアの方?良かったわね山上さん」



今度はボランティア?どういうことだろう。



看護「しかし皆さん偉いわホームレスの方を、必要に応じ施設に入居させ再出発の手助けをしたり入院したら、こうやって御見舞いに来るんですもの」



そうか、こいつホームレスだったんだ。



看護「それに小説」

ニ「えっ」

看護「心を壊してしまった山上さんの代わりに、なんとか出版できないものかと奮闘しているだなんて」

藤「えぇーでも、なかなか難しくて」

看護「だからネットに掲載したんでしょ少しでも可能性に賭け」

藤「はい」

看護「叶うといいですね」



そう言うと部屋を出ていく看護士。

俺とガヤは顔を見合わせ。



藤「帰るか」

ニ「そうだね」



執事は、無言のまま俺達を見つめていた。

こいつにも辛い過去があったんだ、心が壊れてしまうほどの。

複雑な思いを抱え、その場を後にする。

それでも、お前がしたことは許されることじゃない。

そう心で呟きながら―




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