テキストサイズ

幻想世界☆

第26章 月の加護

・北山side

分かっていた、こうなる事は初めから。

あの日、藤ヶ谷に自分から抱かれた日より。

だけど、それでも。



北「くっ…ううっ‥ヒクッ」

運転手「お客さん大丈夫ですか?」

北「えっ、あ、はい」



心が痛い、苦しいくらいに締めつけられ。

ブロロロロ―



運転手「着きましたよ」

北「どう…も」

運転手「あまり無理しない方がいいです」

北「えっ」

運転手「いろいろとあるんでしょ?あぁーいった仕事は」

北「あ、まぁ」



心配してくれているんだ。



北「有り難うございます」

運転手「いえ頑張って下さいね」

北「はい、フッ」



ブロロロロ―

見知らぬ人に励まされ心が癒やされる時もある。

ガチャ、バタン!

けど部屋の中に入ると真っ先に、目の中へ飛び込んで来た藤ヶ谷の服。

これどうしよう…

他にもいろいろと、置いていったままだし。



北「届けた方がいいよな」



でも、どうやって?

メンバーといっしょの仕事のときに持ってくってわけにもいかないし。

きっと嫌がるに決まってる



北「かといって俺があいつのマンションへ行くってのもなぁ、はぁ」



思わず出てしまった溜め息



北「横尾さんにでも頼んでみるとするか」



近づくと服から漂ってきた残り香に胸の奥がキュンと鳴った。

でも…



北「それでも俺は後悔していないから、おまえのこと大好きだし」



そう服に向かって呟きベットまで行くと。



北「寝るか、フッ」



布団の中へ身を沈め見上げた天井。



北「おやすみ藤ヶ谷」



目を覚ませば新しい1日が始まる。

そしたらきっと時間が解決してくれるさ。

またいつもの距離感であいつと。

何事もなかったかのように話せるときが来るって…

そう思い込もうとしたのかもしれない。

このとき、俺は。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ